大昔…

まだこの地が一つの国だったころ…
まだこの地に一人種しかいなかったころ…
全ての者が文様をその身に刻んでいた時代。

国はそれはそれは平和でした。
国はそれぞれのヒトが持っていた"力"により繁栄していました。

山々は緑に生茂り、海は限りなく青く澄んでいました。
風は穏やかに吹き、大地はさまざまな生命の源になっていました。

しかし、"力"とは時に残酷なものとなってしまうものなのです。

ある出来事でヒトは争いを始めてしまいました。
今まで平和だった国の姿はもうすでひとかけらも残ってはいませんでした。
その国はまさに地獄と言っていいほど荒れ果ててしまったのです。

ヒトが住むための家が燃え、動物たちの住む森が燃えました。
ヒトが歩くための大地が割れ、動物たちが駆け上っていた崖から土砂が襲いました。
ヒトが大切にしていた大雨が降り続け、動物たちが生きるために必要な川が氾濫してしまいました。
ヒトが恐れていた嵐が襲い、動物たちが涼しんでいた風が荒れ狂いました。

争いは何日も、何日も続きました。
何がきっかけで始まった争いなのか、知る者はもういませんでした。
ただ、失ったもののために、奪われたもののために、ヒトはその力を振るい続けました。

やがてヒトはその国からほとんどいなくなってしまいました。
男性も、女性も、子供も皆疲れはてました。
それでもヒトは立ち上がったのです。

奪われたもののために。

誰かが飛び出したときでした。
あたりにそれはそれは綺麗でまぶしく、この世のものかと疑うような光りがほとばしったのです。
その眩しさにヒトは目を細めながらもいまだ輝き続ける光りを見つめました。
その光りの中に人らしきものが立っていました。
"それ"は泣いていました。

「なぜ争うのですか」

"それ"は聞きました。

「奪われたものたちのために戦っているのです」

誰かが答えました。

「ヒトとはなんと愚かなものなのでしょう。この争いがなぜ起きたかも知らずに、それでもまだ争うというのですか」

"それ"は目の前の男性の額に手を当てました。
すると、どうでしょう。男性は"それ"と同じ光に包まれてしまいました。
ゆっくりと光が晴れるとそこにはなんと、3人のヒトがいたのです。

「その強き"力"と、その高き知恵と、その丈夫な体を分けましょう」

"それ"はそういうとまた一層光を増しました。
そして"それ"はこう言いました。

「あなたたちの血を決して混ぜてはいけません。不幸が起こることでしょう。あなたたちはひとつの種族として暮らしなさい」

そう言い終わると光が国全体を照らしました。
それは暖かくも悲しみを帯びた光でした。































































コレは物語である…

何人たりとも信じてはいけない。